表裏

愚問愚答
「もし、見方を完全に統合したいと思うなら……」
「……」
「君の嫌いな宗教の中に身を置いてみることだね」
「それで統合できると?」
「……うまくいけば」
「宗教に呑込まれたら?」
「そのときは、君の「“考え”をそのままのカタチで保つちから」が足りなかったということだね」
「あまりよろしくない」
「でも、宗教に呑まれたとしても根本は変わらないんだから、致命的な問題はないはずなんだよ。君が感情的に嫌がってるってだけで」
「いや、やっぱり宗教の外にあれはあるんだと思えるけど」
「それは軸の問題だから。君のいるそこからの話だろう。それに問題はそこにない。“動き”なんだから」
「何と言われても、宗教に傾倒したくない」
「統合はどうするつもり?」
「する」
「できるのか?」
「万が一できないとしても、そこに近づくことはできるし、できないかどうかはわからないじゃないか」
「できなければ意味はないと思うけどね。姿勢で許されるわけではないのですよ。それにできるかどうかわからないっていってもだね、人間としての鎖は強い。その鎖を外せるわけがないだろう」
「じゃあ鎖と折り合いをつけると?」
「折り合いをつけるとは、歳をとらずに生きるということと似ている。生きるなら歳はとるし、歳をとらないなら死ぬしかあるまい」
「宗教に傾倒すれば、それを解決できるとでも言うのか」
「そうと言い切れないが、今よりはどうにかなるやもしれない」
「変わらないと思うが」
「宗教にはそれにカタチがあるだろう。君にはカタチがないんだよ。定められたカタチがとっかかりになるとは考えられないかな」
「お前、何が言いたいんだ」
「言いたいことはない。統合してほしい、したいと思っている」