理解されえぬ実感

愚問愚答
「ここがわたしの意思だとしたらどうでしょう」
「それはない。ここはあなた自身だから。それにあなたに意思はない」
「ないというのが意思を超えるということであれば、意思を含むと考えられるのではないですか。そして、その意思の“動き”がわたしだと」
「“動き”があなただとするなら、その意思自体は一体何か」
「わたしでしょう」
「総括するあなたがあるということか」
「そうなりますね」
「するとおかしくはないか。あなたはあなたの一部であり、総括するあなたではなくなってしまう」
「しかし、それらのわたしはわたしであることに変わりないですよ」
「いや、そうであってもおかしい。あなたは永遠にあなたそのものを持たないことになる」
「アナタは自分自身を持っているのでしょうか」
「持っている。否応ナシに」
「アナタ自身そのものを?」
「個、核、総合としての体。これが私自身。安定と鎖だ」
「総合としての体、指し示せるものということですか」
「ええ、あなたはそれを持っていない」
「実体を持っていない」
「そういう意味合いでも持っていないが、確実に想定できるという意味合いでもそれを持ち合わせていない」
「アナタがわたしを指し示すときのわたしは何なのですか? アナタはわたしを語っている」
「それは私の想定するあなたであり、その想定するあなたもあなたの一部分でしかない」
「アナタはわたしを捉えることはできない」
「あなたは私であるのかもしれない。なのに捉えられない」
「根本を見ることができないのでしょうね。自分の顔を直に見ることが不可能であるのと同じように」