愚々

「他人を理解できない」
「何故理解できないのか」
「難しいから」
「それ以前に、理解しようと思ってないのではないか」
「そうかもしれない」
「何故理解しようとしないのか」
「理解すると、自分が浸蝕されるように思えるから?」
「なぜ浸蝕されるように思うのか」
「自分が薄っぺらいから」
「何故薄っぺらいのか」
「何もわからないし、何もできないから。根拠も持っていない」
「ならば、何かわかって、何かできて、根拠を持っていれば、薄っぺらくないのか」
「多分」
「では、何かわかって、何かできて、根拠をもつようにすればいい」
「言うのは簡単だろうけど。どうしたら他人を理解できるようになるのか」
「理解しようとすれば、今よりかは理解できるだろう」
「浸蝕される心配は」
「自信によるものだろう。自信をつけよ」
「どうやって」
「自分自身による、良い意味で自己完結している自信。静的な自信」
「え、どうやって……」
「動的なものでもいい」
「……自信がつけば浸蝕されないのか」
「元々浸蝕なんてされないのはわかっているだろう」
「しかし怖い」
「その怖さは自分の持ち方の弱さからきているのだと思う。しっかりと保てるのであれば、誰の話だろうが、どんなことだろうが、受け止められるはず」
「あれみたいに?」
「そう。見方の統合にも近づくだろう」
「人の考えに左右されるのも怖い」
「それは左右されることを受け入れればいい」
「軸が揺さぶられても?」
「軸が変わったとしても根幹は変わらない。すぐにそれを忘れるところ、よろしくない」