はいずる

「卵が先だ。現状自体は動かないから」
「胞(泡)は動くと」
「うん。あと、胞は何重にも重なってるものが多いと思う。単体で存在するものは少ないだろう」
「少ないっていうか、ないんじゃないの」
「そうかも。あと、これ、本質・性質の話ととても似てる気がする」
「在り方が?」
「そう。ある意味可能性も本質と性質なのかもしれないよ。現状が本質、他が性質」
「え、可能性と本性質を重ねるなら、現状も性質じゃない?」
「そうかな」
「だって現状だって他のものとたいして変わりないものなんだし」
「それを言うなら本質だってそうじゃん」
「あー、そうだなあ。……でも、可能性の場合は焦点が本質っぽくないかな」
「焦点が本質で、現状・眠・仮死が性質か。イマイチ……まあ完全に一致することはないだろうし」
「ねえ、焦点って胞のひとつひとつにあるものなのかな。複数あるのかな」
「いやあ、ないんじゃないかな。胞の現状は胞同士の動きで変わってくんだと思う」
「ならさ、現状の焦点いらないんじゃない? 現状は胞の動きで変化するって考えられるから」
「いやいや、胞の動きで変化するのは眠まででしょ。仮死までは変えられない」
「その根拠は」
「胞は現状の中にあるから」
「中から変わってもおかしくないんじゃない?」
「もし変わるとしたら、仮死と眠の中間にあるような可能性もあるのかも」
「あたらしい種類の可能性?」
「あたらしいんじゃなくて、なんて言うんだろう、玉虫色みたいな……」
「どちらの特色も持ち合わせる、みたいな?」
「いや特色を持ち合わせてるんじゃなくて、曖昧な感じ……なんて言うんだろう」
「その可能性がどうしたの?」
「橋渡しをする。その可能性が徐々に徐々に、仮死に傾く方向へ動く」
「話は戻して、焦点の有無はどう?」
「揺らぐよね。可能性の在り方によって分かれると思う」
「どう分かれるの?」
「可能性の在り方がビリヤード型なら焦点はある。浸食型なら焦点はない」