犬が尾を振り駆けてくる

「ねえ、影って光を遮ってできるものじゃん? ならさ、それって存在している証明にならないかな」
「何故」
「だって、そこに“ある”から光を遮ってるわけでしょ」
「そうだね。でも、その影が存在している証拠がないとダメでしょ」
「…………」
「…………」
「いまふと思った。存在の定義は“他のモノに影響を与えること”って考えたけど、それって他人が必要だよねえ。いくら他に影響が与えられていても、それを他人が認識できなかったら……」
「それを含めて“他に影響を与える”んじゃないのかな」
「でも、その他人の存在も……」
「面白いし変だよね。同じものに頼らなきゃならないって」
「面白いかなあ、なんか気持ち悪いというか気味悪いというか。人が人を喰らって(人を)産み増やすみたいな感じ」
「性質も関わってくるみたいだね」
「こぎと も寄ってきたよ」
「気のせいかな、飼い主がチラチラ見える気が」
「気のせいでしょ」